小さいとき通っていた美容室は、人の往来が多い賑やかな場所でした。
オーナー美容師の女性は、筆者の子どものころすでに高齢で「老人クラブには入らない、家で株をやる」とよく言っていました。
当時は「それって寂しくない?」と内心、思っていました。
こうして日々、家でひとり仕事をしているとたまに、彼女のことを思い出します。
手に職を得て老後の資産運用まで考えていた「元祖・自立型在宅ワーカー」
この美容師は自宅の一部を美容室にして、自ら切り盛りしていました。

同居している人の面影は、なかったように記憶しています。もしかすると独り身だったのかもしれません。
二匹の犬を可愛がっていた
彼女は日本犬と洋犬を飼っていて店内に洋犬を座らせ、店の入り口に日本犬の犬小屋を置き、それはそれは可愛がっていました。
美容室があった場所を数年前に訪ねたら、駐車場になっていました。店を畳んでからの彼女がどうしたかは分かりません。
客のいないときは新聞を熟読
店が空いている時間帯、外から店内を覗くと、老眼鏡をかけた彼女が新聞を熟読する姿をよく見かけました。
どんな記事を読んでいるかまでは見えませんでしたが「老人クラブは嫌。犬と遊んで株をやる」などと言っていたし、熱心に見ていたのは新聞の株価欄だったかもしれません。
人と関わる仕事に限界を感じるとき
小学生だった筆者はあるとき、雑誌の切り抜きを持参して「聖子ちゃんカットにしてください」と彼女にお願いしました。
「あなたの髪質では無理なの」と言われて、心からガッカリした記憶があります。
人と関わる仕事をしていて相手のニーズに応えられないとき、自分の不甲斐なさに落ち込みますよね。
一人静かに収益を積み重ねる株式投資に彼女が魅力を感じたのも、わかる気がします。
「老人クラブに行かずに株をやる」老後を寂しいと思った
彼女の老後計画に、子どものころは寂しいイメージを抱いていました。

それが自立した、自由な人の姿であることを理解するのに、数十年かかった気がします。
筆者も株を始めて10年経ちました。
他の仕事をしない時期があっても、自由に外食したりタクシーに乗ったり、ほしいものを迷わず買える程度の余裕があります。
最高に贅沢な自立
あの日、新聞を広げていた彼女は孤独な寂しい人ではなく「自分の自由を自分の手で実現する強い人」だったと、今ならわかります。
「寂しい」どころか、最高に贅沢な自立です。
愛犬を撫でながら一人、収益を積み重ねる「静かな強さ」を持っていた彼女は、誰よりも自由でした。
タクシーに乗る時、迷わず買い物をする時。ふと、新聞が置かれた美容室と、足もとにいた犬たちの記憶が蘇ります。
世間が考える幸せの形ではなく、自分が心から納得できる「平穏な日常」。
筆者も、彼女と同じ景色を見ようとしている一人かもしれません。
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